私を引き止めていた黒い煙の正体
自由を止めていたのは、あのとき流せなかった涙だった。
カウンセリングを受けている。自分の口から繰り返し出るキーワードに「自由」があって、カウンセラーから「ゆきさんにとって、自由ってどういう状態ですか?」と聞かれた。
「気がかりがないこと」と答えた。
気がかりとは、負のビリーフ。それらをなくしていけば、抵抗ゼロで飛び回れる予感があった。
次に「『自由でない』とはどういうイメージですか?身体の体感やイメージなどありますか?」と聞かれた。
これは体感を伴うイメージが以前からある。飛び立とうとする私の腕の辺りに黒い煙のようなものがまとわりついて重く引っ張り下ろされるイメージ。母の顔が見えた気がしたけど、それさえも自分が作っていることを私はもう知っている。
「その煙に名前をつけてみましょうか。その子になってみましょう。その子は、ユキさんの為を思ってそういうことをしています。なんでそんなことをしているか、聞いてみてもらってもいいですか?」
こう言われるが早いか、私は理解した。
この子たちは、まだ光を当てられていない、完了していない(抑圧された)私の感情だ。
そう理解すると、黒い煙は気づくと晴れていて、まだ不明瞭だけど、たくさんの場面がそこにあるのが見えた。幽霊の正体見たりと言ったら自分に失礼だけど、それが何かが分かった途端、もっと言うとそれに目を向けた途端に、黒い煙は消えてなくなっていた。同時に、自分を引っ張る重りのような重力ももう無かった。見てほしかっただけなのだ。誰が。小さな自分が。
このまま私がどこか遠くへ行ってしまったら、それらは見て見ぬふりをされ、永遠に置き去りにされてしまうかもしれない。私が遠くへ行きたかったのは、それらを見ないため?それはいやだ。私は私の全部に光を当てると決めたんだ。
感情を迎えにいく
「せっかくなので、そのうちの一つを見てみましょう」と言われた。「どんな場面が見えますか?」と言われても映像はどれも不明瞭なままだったけど「何歳くらいのものでしょう?パッと浮かぶ数字はありますか?」と質問を変えてもらうと「9」という数字が浮かんだ。
そこから引っ張られて浮かんできた情景は、2人の友だちと私。女の子特有の「誰と誰が手をつなぐか」みたいな話で「こっち(私じゃない方)がいい!」と言われたのだ。
当時を思い返すと「(周りの子から見て)ちゃんと友だちがいる」自分であるために、誰かと居られると安心したり、なんとなく「イケてる」子と仲良くしたがったりした部分があった気がする。なので、その価値観を自分にも向けて「私って(そういう)価値が無いのかな?」というような気持ちが、さきほどの場面での私の想いだった。
今日は「未完了の感情」から始まってこの場面に来た訳だから、あのとき出せなかった感情を出すべく、大人の自分と「安全な場所」へ行って、泣いたり、言いたかったことを聞いてもらったりしましょうと提案された。
「安全な場所」と聞いて、まずはいつも居た祖母の家の居間を思い浮かべたけど、もしそこで泣いていれば「どげんしたとおお!!!???」と大げさに心配される。「あ、小さい頃の私って、安心して泣ける場所無いと思ってたんだ」と気づいた。代わりに、以前のカウンセリングで作った「(イマジナリー)安全な場所」へ行った。思えばここが「安全基地」として機能してるんだと思う。
カウンセラーに促され、大人の自分が子どもの自分を抱きしめると、それだけでもうよかった。「泣いていい」と自分が受け止めてくれるのが分かるから、それはもう肯定だった。「価値がないのかな」という想いなど完全に勘違いだと分かった。これも自分が自分の安全基地として機能していると確信できた体験だった。昔マンガで読んだ、時を超えて自分を迎えにいく場面を思い出した(「前科者」第14話)
この瞬間に理解したのだけど、出来事自体は本当にどうでもよくて!!「感情を出させてあげられなかったこと」が苦しかったのだった。
「作りたい」
その後、同じ場所で「もし小さいゆきちゃんが何かしたいことがあればさせてあげてください」と言われた。そう言われて浮かんだ場面は、小学校の砂場。図工で作った工作を持ってみんなで何やら遊んでいる場面だった。それは楽しい記憶として残っていた。「図工の工作みたいに、何か自由に作りたいみたいです」そう言った瞬間、思いがけず涙がこぼれた。そんなに嬉しいか…!と驚いた。
思えば絵を描いたり、ちまちまものを作ったりすることは好きで(ネイリストになろうかな)、「友だちと仲良く」することよりよっぽど好きだった。「(周りの子から見て)ちゃんと友だちがいる」ようにと他者視点をモチベーションにアレコレ必死にやってる時点で、人間関係のセンスもなければ興味も薄いのだ。
作らせてあげよう、と思った。得も損もないところで。岩絵具やキラキラしたパーツをズラッと並べて、自分のためのアトリエを作ってあげたいな。
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